粒子線医学物理学研究分野

医学物理学とは、医療、特に、放射線医療・粒子線医療を支える物理および工学の総称です。その内容は多岐にわたっていますが、重要な使命は「放射線治療法の高度化の促進」と「品質保証」にあります。本研究分野では、粒子線治療法の一つである「硼素中性子捕捉療法(BNCT)」に重点を置いて、この療法の最適化および高度化のための医学物理学研究を行っています。以下に、主な課題を列記します。

BNCT用照射システムの開発・改善

BNCT用中性子照射場として、原子炉ベースおよび加速器ベース照射場の開発・改善に関する検討を行っています。これまでの大きな成果に「京都大学研究炉(KUR)重水中性子照射設備(HWNIF)」の改修および「サイクロトロンベース熱外中性子源(C-BENS)」の開発(住友重機械工業・ステラファーマと共同開発。2020年3月に医療機器として承認)があります。

原子炉を利用した照射システム(KUR重水設備)
粒子線加速器を利用した照射システム(C-BENS)

BNCTおける線量評価の高度化

照射場の特性評価時、品質保証/品質管理(QA/QC)時、実際の患者への治療照射時、等の各フェーズにおいて線量評価を実施する必用があります。BNCTにおいては、熱、熱外、高速中性子、γ線に加えて硼素に由来する線量を弁別しながら、3次元かつリアルタイムで線量評価を簡便・低労力で行うことが、究極の目標となっております。この究極的な線量評価を念頭に様々な線量評価手法を検討してます。

線量評価統合システム
即発ガンマ線イメージング技術の一例(PG-SPECT)

物理的線量の測定評価と生物学的効果因子の定量

生物学的な効果を物理工学的な視点から評価するために、マイクロドシメトリや化学線量計を用いた評価に関する研究、等を行っています。

マイクロドシメトリの一例(豪州ウロンゴング大学との共同研究)
化学線量計(ゲル線量計)による線量評価(広島国際大学との共同研究)

医学物理・物理工学面でのBNCTの最適化・高度化およびQA/QC

現在のBNCTでは、従来の脳腫瘍および悪性皮膚黒色腫に加え、難治性頭頸部腫瘍、多発性肝腫瘍等の体幹部腫瘍も臨床の対象となっています。このような適応拡大を背景に、上記の課題以外にも、医学物理・物理工学面でのBNCTの最適化・高度化や、QA/QC(品質保証/品質管理)に関する研究を行っています。

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